徒然な風の場所―「夢見石の庭」 

徒然と日常なり、夢の出来事なり、TVの感想なりと日常の中の不思議をつづっていくブログです。よろしくお願いします。季節凪がささやかにどこかで

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「こぶた」のおはなし

一種の「外圧?」のような、ものの影響で書いてみました。

自分の責任で書くのとは違って、他からどうこういわれて書くのは久しぶりかもしれません。

テーマは「ぶた」「800字程度」

難しいなぁ。ショートショートは本当に、その人の実力と性格?みたいなものが如実に発揮されるようです。

執筆時間は2~3時間

駄文ですが、よろしければ。
こぶたはかわいいと思う。

緑の森、果ての森と呼ばれているわたしたちの村は主に農作と、そして家畜がもたらしてくれる恵みとで、生活を成り立たせている。

そして、今年の春の息吹の下で大変な難産の末に一匹のこぶたが生れ落ちた。

わたしはおばあちゃんのお手伝いとして、出産にも立ち会った。

命の、鼓動―――というのをそのとき、わたしは始めて感じた。

お母さんの体内から始めて、外に出たというのに、あんなに小さなこぶたはそれでも生きていた。

午前中に、畑仕事を終えて、早めのお昼を食べると、わたしはこぶた達のいる厩舎へとのんびりと向かう。

その年の春に生まれた子豚は全部で六頭、わたしはその子達を連れて、今、午後のお散歩の道を進んでいる。

季節は晩春、若木を通して零れ落ちる光のまなざしは、少しずつ強く、息づいてきている。

目を閉じて大きなクスノキに触れると、トクン、トクンとその中を通っていく力強い鼓動が掌から胸に伝わって、ドキドキと心臓が共鳴する。

わたしは、春が好き。

移り変わる、甘い空気の繊細さと、森の恵みをもたらしてくれるぽかぽかの太陽、春はどこをとっても楽しいと思う。

わたしは村の東から出てしばらくいったところにある小川に掛けられた橋の袂で、こぶた達に待つようにいいおいて、一頭ずつ、順番に川岸に誘導して小川で水を飲ませてあげる。

せせらぎを流れていく水は、とても澄んでいて、掌で掬うととても冷たい。

こくこくと競うように喉を潤していたこぶたたちもやがて、小川に入って体を洗い始める。

時々、わたしに水をかけてくるやんちゃな子もいて、なかなかに気を抜けない。

そうやって、こぶた達といっしょに水浴びをしていると、橋の上をアティが通りかかった。

わたしは、アティがこちらの方に来たのに気付いて声を掛ける。

「アティー!」

「ミリィ!!」

アティは、手と背中に抱えた柳細工の籠を橋の上に置くと、大きく橋から身を乗り出してわたし達を見下ろすような形になる。

「山菜取りの帰り?」

「そうよ、ミリィはこぶた君たちのお守り?」

アティは、わたし達を見て、楽しげにそう言った。

「そうだよー、えへへ」

「ミリィは、のんびりやさんなんだから、そろそろ上がらないと日が暮れちゃうよ」

言われて辺りを見回してみると、森の中の明るさが大分減って、代わりに影が濃くなっているみたいだった。

「分かったー、いっしょに帰ろ」

わたしは、こぶた達を纏めて川から上がると、急いでアティのところに戻る。

帰り道はこぶた達に少しだけ早く歩いてもらいながら、アティとのいろいろなおしゃべりが村の入り口まで続く。

「ミリィはミモザの花冠もう誰にあげるか決めた?」

「え!? …うーん、まだかな」

「あれ、リクにあげるんじゃないの?あたしてっきり…」

「え、…ええ!! リクはそんなんじゃないよー」

「じゃあ、あたしがあげちゃおっかなぁ」

「ええ、だめぇ」

「ふふ、冗談、冗談」

「もう、からかわないでよ」

「あ、村の入り口が見えた。あそこまで競争ね、勝ったほうは仕事を一回変わってもらえる、はい始め!」

「え、待ってよー」

それから、わたしはこぶた達を寝床に連れて行って、アティは倉庫に採ってきたものを保存しに行く。

村の入り口で、分かれる頃には、空はもう満点の星がきらきら輝いている。

わたしの一日は、そうして、過ぎていく。

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Novel 掌編 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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